新JTEX事業ガイド完成/新企画連載:随想 鬼平犯科帳[第6回]

*2023年3月16日(木)

春寒もようやく和らぎ、過ごしやすい季節となってまいりました。
躍動的な季節に向けて、ますますご多忙のことと存じます。

本日は、

  • 「JTEX新事業ガイド完成」
  • 石岡慎太郎(JTEX理事長)による池波正太郎の小説『鬼平犯科帳』をもとにした「鬼平犯科帳随想」第6話

ぜひ最後までお読みください。

新JTEX新事業ガイド

「やりがいを持って働きたい」を応援したい。JTEXの事業ガイドが完成しました。




1.認定訓練事業
    (1)JTEXは職業訓練法人、労働者の自律的学びを応援します
      JTEXは認定職業訓練と生涯職業訓練を行うことで、労働者の経済的社会的地位の向上を図ることを目的としています。2014年、認定職業訓練関係で、厚生労働大臣表彰をいただきました。
    (2)JTEXの第一の仕事は認定職業訓練です
      認定職業訓練は、公共の職業訓練基準に合致している訓練として都道府県知事が認定した訓練をいいます。JTEXでは、1級・2級技能士コースと、3級技能検定対策科がそれにあたります。
    (3)SDGsゴール4.4はJTEXの目標です
      「2030年までに、技術的・職業的スキルなど、雇用・働きがいのある人間らしい仕事及び起業に必要な技能を備えた若者と成人の割合を大幅に増進させる。」JTEXは3級から始まる認定訓練を活用して、多くの方が技能士となることで、スペシャリストとして活躍いただきたいと願っています。
2.生涯職業訓練
    (1)働く人の主体的な学びを大切にします
      1971年、高度経済成長の真っただ中で、エレクトロニクス化の技術革新の波に対応できる新しいタイプの労働者が必要とされ、JTEXは誕生しました。工場で働く人が働きながら学べる「通信講座」の職業訓練(リスキリング)を開始したのです。
    (2)学びのプロセスを大切にします
      JTEXではアナログでしかできない、ていねいで分かりやすい教材、親切で共に寄り添う指導サービスにとことんこだわりたいと考えています。一方、デジタルだからこそできるサービスを増やし、Myページを利用しながら、より便利でより学びやすい「学びのプロセス」を構築していきます。
    (3)技能・技術を大切にします
      JTEXはお客様のご要望から、企業の生産活動を支える有資格者を育成するために、電験やQC検定などの技術資格の支援講座を開発しました。そして各業界特有の基礎技術講座も加わり、基礎技能・技術講座の幅広い体系をつくってきました。JTEXではこれからも技術・技能分野を大切にし、実務と知識がつながるように、努力してまいります。
3.通信教育
    半導体が開発され、コンピュータの進化がはじまり、それをつなぐインターネットの情報革命が起こり、AI活用へと加速するデジタル技術、グローバル競争の拡大の中で、日本人が駆け抜けてきた50年。JTEXも時代が働く人に要請する学びを次々と開発してきました。

    だからこそ、思うのです。学びはゆっくりと着実に、土台をしっかりすることが大切だと。基礎となる考え方、知識が身についていれば、その先の応用技術は理解しやすいのです。

    考える力はパソコンやスマホ画面だけでは身につきません。デジタル媒体は速読向きで、それは短絡的思考を生みやすく、紙の本は「深く読む脳を育てる」という研究見解があります(米国の神経科学者メアリアン・ウルフ氏)。

    そして、書くという行為により、得た知識を整理し記憶することができるのです。

    自学自習には「通信教育」。わたしたちは自信をもっておすすめします。

4.eラーニング・セミナー
    (1)現場で必要とされるeラーニングを提供します
      JTEXには50年間、構築し続けてきた基礎技術・技能系講座のラインナップがあります。これらを活用して、現場で必要とされる技術・技能の基礎知識を学べる「JTEX eラーニング」の開講を開始しました。
    (2)難関資格の合格を応援します。
      難関技術資格に自学自習でチャレンジする方を支援するために、Web動画セミナーをはじめ、多様なプログラムを用意しています。
    (3)実技対策セミナーでお役に立ちます。
      技能検定の実技対策セミナーは毎年多くの方が受講され、高い評価を受けています。さらに、内容をブラッシュアップしてご利用をお待ちしています。
5.わたしたち
    「職業訓練法人日本技能教育開発センター」、固い名称ですが、しなやかな組織でありたいと、わたしたちは思っております。

    仕事と私生活はどちらも重要とJTEXでは考えています。熱意をもって仕事をし、それ以外の時間は各自がそれぞれ充実した時間を楽しむ。社会の中の一個人としての時間を大切にしなければ、社会で役立つことを発想できないと考えるからです。



鬼平犯科帳連載について

JTEXメールマガジンでは、石岡慎太郎(JTEX理事長)による池波正太郎の小説『鬼平犯科帳』をもとにした「随想 鬼平犯科帳」を1話ずつお届けします。
息抜きにご一読いただければ幸いです。

作者の池波正太郎氏は19歳のとき(昭和17年)、小平の国民勤労訓練所(戦後の中央職業訓練所)に入り、萱場製作所で2年間、四尺旋盤を使って飛行機の精密部品を作り、そのとき体で覚えたものつくりの手順で、『鬼平犯科帳』を書いたといいます。
このように、この小説の背景は意外に深く、皆様もこの作品から学ばれる点が多いと思います。



第6回『迷路』

    鬼平は天明7年(1787年)より8年間長官を務め、部下とともに身命を賭して盗賊の追捕に当たったが、その代表例は『迷路』(文春文庫22巻)の時であると思う。

    盗賊・猫間の重兵衛は、義弟・池尻の辰五郎が鬼平に包囲され自殺したと娘から聞き、復讐を誓う。ある日浪人に鬼平が襲われたのを皮切りに、部下の与力、親戚の旗本の家来、役宅の下男、親しい医師の弟子が次々と暗殺された。1ヵ月たっても手がかりがなく、幕閣では、鬼平が辞任すれば暗殺は止むとの考えも出始める。

    他方、猫間は盗賊・法妙寺の九十郎に、江戸へ放火して盗みを働くことを頼む。しかし、法妙寺は密偵とは知らず、元盗賊の玉村の弥吉に助力を頼んだため、その手下が弥吉に押込み先は鉄砲洲の薬種問屋ともらし、また自分の深川の盗人宿も改方に知られてしまう。鬼平は、先頃この問屋に入ろうとして自殺した池尻の事件を思い出し、池尻の義兄が弔い合戦のため法妙寺の力を借りたと推測する。

    さらに、問屋に出入りする引込み役の座頭がいる築地の盗人宿もわかると、鬼平は頭を丸め、一線で見張りや尾行に当たる。ある日深川の盗人宿から出てきた、自分を襲った浪人をつけると、飯倉の盗人宿に入り、そこには人相書通りの法妙寺がいて、ついに二つの線はつながった。

    しかし、親戚の庄屋の下男が暗殺される事件がまた起きた。鬼平罷免の動きが強まる中、鬼平は妙法寺一味に狙いをしぼり、監視をしていると、築地の盗人宿から女が旅立った。あとをつけた密偵・彦十は、昔本所で悪事を働き、鬼平に右腕を切られ、恨みを持つ元御家人・木村源太郎(猫間)と女(猫間の娘)が深谷で会うのをついに発見した。この報告を受けた鬼平は、佐島与力に、明後日明け方に法妙寺の盗人宿の一斉手入れを命じて、自分は翌朝浪人たちの隠れ家を襲ってこれを倒し、改方の先発隊を追って深谷へ急ぐ。

    その夜鬼平の罷免が決定された。しかし、それを申し渡した佐島与力から鬼平の計画を聞いた上司京極備前守は、自分の責任でこれを許可する。

    鬼平に逮捕された木村は、昔本所で鬼平が自分の盗みの見張りをするなど、悪行を行ったと町奉行所に訴え、上級審の評定所が取り調べることに成功するが、自宅謹慎する鬼平に半年後長官復帰の断が下り、部下たちは歓喜して鬼平を役宅に迎えるのであった。

    なお、作者はあの『星の王子様』で有名なフランスの作家サン・テグジュペリの影響を受けた。その作品の1つ『夜間飛行』(新潮文庫)は、1930年頃南米で郵便を夜間飛行で運ぶ操縦士と支配人の話だが、登場人物はそれぞれ義務である危険な仕事に献身的に熱中し、それを成就したときにただ幸福な安息を得るだけである。そういう人間の生き方に共鳴した作者が鬼平と部下たちの世界を作り出しているのではないか。

    『迷路』を読んでいるととくにそう感じる。




2023年3月16日