【電験三種Q&A(8)】誘導電動機と同期電動機の違いがわかりません。

Question
誘導電動機と同期電動機の違いがわかりません。
とくにトルクの発生で、誘導電動機は回転子の発生する回転磁界から少し遅れた速度(同期速度×(1-すべりs))で回転している場合にトルクを発生しますが、同期電動機は、回転子が回転磁界と同じ速度(同期速度)で回転している場合にトルクを発生します。この違いを教えてください。
Answer

まず、誘導電動機の原理ですが、誘導電動機は固定子巻線のつくる回転磁界中で回転する回転子に誘導起電力が発生して電流が流れ(フレミングの右手の法則による起電力)、それによる電気力を利用して駆動トルク(フレミングの左手の法則による電磁力)を得ています。
誘導電動機が停止している場合は原理的には変圧器と同じであり、その等価回路は変圧器と同様になります。
誘導電動機の固定子の電機子巻線に三相交流電圧を加えると、回転磁界が発生します。
この回転磁界の回転速度を同期速度といいます。誘導電動機の回転子は、この同期速度より少し遅いNで回転し、で表され、この式のsをすべりといいます。
このNの速度差があることによって、回転子に対する回転磁界は相対的にNsで回転することになります。
この遅くなった回転磁界によって回転子は磁束を切り、起電力が発生しています。
すなわち、誘導電動機には原理的に速度差が必要になります。
トルクはこの相対的な速度差、すなわちすべりsに関係しますが、すべりsの大きさにより二次誘導起電力や二次側のリアクタンス(漏れリアクタンスといいます)が変化します。
そのため、すべりsが 1 のとき、つまり停止時はトルクが小さく、回転速度が増加するとトルクはすべりsに比例して増加し、最大トルクを超えるとすべりsに反比例して減少するという、やや複雑な曲線になります。
トルクと二次入力は、すべりsでトルクT〔N・m〕を発生し同期速度で回転していると考えたときの、機械的出力が二次入力に等しくなる、という関係にあります。
このことから、二次入力は同期ワットと呼ばれ、トルクは同期ワットに比例することになります。
一方、同期電動機は、固定子の電機子巻線は誘導電動機と同様の構造です。
しかし、回転子の巻線は直流によって励磁され電磁石となっていて極性N、Sをもっており、回転磁界の極性S、Nの吸引力によって、回転子は回転磁界と同じ速度(同期速度)で回転します。
そして、トルクの大きさは、回転子と回転磁界の位置関係δ(デルタ)により発生し、無負荷状態ではδが 0 になりトルクは発生しません。
このδ〔rad〕を負荷角といいます。
三相同期電動機は、負荷が増加するとδが大きくなるだけで、δ〔rad〕がπ/ 2〔rad〕より小さい場合は回転速度は一定ですが、π/ 2〔rad〕より大きくなると、追従できなくなり停止してしまいます。

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