新講座「生産性を高める 工場のDX」 /新鬼平随想録[第11回]

*2023年11月30日(木)

日増しに寒くなってまいりましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

本日は、

  • 2024年6月開講「生産性を高める 工場のDX」のご紹介
  • 石岡慎太郎(JTEX理事長)による池波正太郎の小説『鬼平犯科帳』をもとにした「新鬼平随想録」
    第11話

について、ご案内いたします。ぜひ最後までご拝読いただければ幸いです。

2024年6月開講「生産性を高める 工場のDX」



【「スカイブルーカラー」としての現場リーダーとDX】
 インダストリー4.0が完全に実現されたスマート工場では、事務職(ホワイトカラー)の意思決定や業務はAI(人工知能)に置き換わり、作業者(ブルーカラー)の単純作業は完全自動化されたモノづくり装置に置き換わる徹底した自動化省力化がテーマとなっています。インダストリー5.0では4.0の先に持続可能な製造業の姿として、そのようなデジタル要素を使いこなす人間中心の世界像が示されています。

インダストリー4.0の時代であっても現場リーダーには、機械の調整と保全を行い、生産の進行を妨げるあらゆる事柄に臨機応変に対応しなければならないという役割があります。5.0の時代はその延長にあり、可視化されるデジタルデータを読み取り対応する力こそが人間中心として、現場リーダーに求められていくのです。

このため、将来の現場リーダーは現場に密着したブルーカラー的業務を続けながら、最適化された生産を目指す創造性や知的熟練などのホワイトカラー的要素も取り入れた、「スカイブルーカラー」人材になることをめざし、リスキリングで成長していくことが期待されています。

本講座は、工場の主役である現場リーダーが「スカイブルーカラー」人材としてさらに成長していくいことを主題として、現場リーダーの役割と業務の情報化をわかりやすく解説しています。

しかしながら、デジタル化やDXという言葉が叫ばれているものの、現状では現場リーダーの実感はいまひとつかもしれません。そこで「工場の利益」「納期・品質・原価の管理」など工場の本質を学び、あるべき工場の姿をめざしてDXを進められるよう、工場の本質的知識を学びの出発点とします。

【工場のDXとは】
 工場のDXとは、単なる作業の自動化・デジタル化ではなく、生産性向上をめざした業務の変革です。

工場の課題を見出し、その課題を克服するために目標を立て、実態を把握し、実態を目標に近付けるように変えていくプロセスをPDCAで回し、さらに強い工場をめざすことが重要です。

今では、IoTやAIの技術を用いることで、データによる実態把握と原因分析ができ、工場の変革が可能になりました。

DXは工場全体の変革でありながら、生産性を向上させるために自らの業務を改善していく必要があります。一人ひとりが主役となって工場のDXを進めるイメージを持てるようにリスキリングも含め学習していきます。

  

【著者紹介】

著者である山口俊之先生は、東芝府中工場時代に電車のモニタリングシステムを開発しました。その後独立し、POP研究所所長として各地の工場のデジタル化、情報化を支援してきました。

POP(Point Of Production)とは生産時点情報管理という情報システムの概念です。製造現場の生産情報をシステムで採取し、リアルタイムに情報処理をして、現場管理者に提供することで、生産性の向上に寄与します。

【学習項目】
<1か月目学習>
  • 序章 製造業の現状と課題
  • 第1章 生産工場の本質
  • 第2章 DXの基礎知識
  • 第3章 工場のDXへのアプローチ
  • 第4章 DXの進め方
<2か月目学習>
  • 第5章 DXで実現すること
  • 第6章 現場リーダーの役割
  • 第7章 DXのためのリスキリング
  • 第8章 具体的なDXの取り組み

※内容は、一部変更される可能性があります。

現場リーダーの日々の業務に密着しつつ、DXでの改善の方向性を示す講座は他にはありません。
ぜひ、これからの現場リーダーの育成に本講座をご活用ください。



鬼平犯科帳連載について

JTEXメールマガジンでは、石岡慎太郎(JTEX理事長)による池波正太郎の小説『鬼平犯科帳』をもとにした「新鬼平随想録」を1話ずつお届けします。息抜きにご一読いただければ幸いです。

作者の池波正太郎氏は19歳のとき(昭和17年)、小平の国民勤労訓練所(戦後の中央職業訓練所)に入り、萱場製作所で2年間、四尺旋盤を使って飛行機の精密部品を作り、そのとき体で覚えたものつくりの手順で、『鬼平犯科帳』を書いたといいます。
このように、この小説の背景は意外に深く、皆様もこの作品から学ばれる点が多いと思います。



第11回『泣き味噌屋』

    前回、火付盗賊改め方の人達は、その義務である危険な仕事に全身的、献身的に熱中し、それを成就した時、ただ安らかな休息を得る人達であると述べたが、そんな人達の話をあと3話書いてみたい。最初が74話の「泣き味噌屋」(『オール読物』昭和49年2月号。文春文庫11巻)である。
    平蔵は与力8名、同心45名の部下とともに、犯人逮捕に抜群の成績を上げたが、役料や捜査費は変わらず、亡父の遺産をほとんど無くしていた。また部下も家族に内職をさせ、捜査費の足しにしていたが、至急の捜査にお金が要る時は、勘定掛りの同心・川村弥助に強く迫ることも珍しくなかった。
    川村は27歳、6尺に近い堂々たる男なのだが、臆病な性格で、地震の時に恐怖で失禁し、それを恥じて泣いてから「泣き味噌屋」と渾名あだなされていた。そんな彼がうなだれ、黙って泪をはかまに落とすのを見ると、部下は軽蔑やら同情で要求をやめるのであった。
    しかし平蔵は「勘定掛りとして川村は誠に優れている。通常は3人いる勘定掛りが1人で済み、2人が外勤に回っている。川村の才能はこの世の宝物である」と妻・久栄にもらしていた。
    ある日、四谷坂町の御先手組・組屋敷から川村を送り出した妻・さとは、同じ四谷の仲町にある実家、菓子舗・栄風堂へ独りで出掛けた。そこの3女のさとは、一昨年、19で嫁いだが、川村が実家の「初霜煎餅」が大好きなので、いつも貰いに行くのである。煎餅を呉れた兄にいわれて、さとはその後鮫ヶ橋谷町に寄り、小間物屋に嫁いだ幼友達と会い、人通りのない、寺院ばかりの、小暗い坂道を帰って行くと、突然首筋を強打され、気を失った。
    翌日の夕方、近くの廃寺の墓地で絞殺されたさとが、隣の寺の小坊主により発見された。鮫ヶ橋の御用聞き・富七と町奉行所の同心が調べたが、既に改め方から照会が出されており、川村が確認のため呼び出された。川村は妻の体を抱き締め、顔に顔を押し当てると、傍目はためも構わず号泣をした。
    一方平蔵は、さとが行方不明になった夜に捜索隊を設けたところ、妻子を死なせた同心・小柳安五郎が是非にと参加し、以後彼を中心に犯人の捜査が行われたが、手がかりがない。川村もさとの密葬を済ませるや再び寝たきりとなったが、14日目の朝、富七が下っ引の庄太を連れ、外出中の小柳を訪ねてきた。平蔵が会うと、庄太は牛込払方町の菜飯屋の亭主に聞き込みをしたところ、3日前2人の剣客が来て、煎餅が云々と話をしていたという。喜んだ平蔵がわしの褒美だと1両を与えると、2人は大感激をして帰っていった。
    早速小柳が菜飯屋の2階に詰め、庄太と密偵・伊三次が張り込むと、2日目の夜、2人の剣客が現れ、3人が尾行すると、中里町の町道場に入った。伊三次が居酒屋で聞き込みをすると、道場主は東軍無敵流の和田木曽太郎といい、2人の内の1人である。さらに2日間小柳達が調べると、道場では夜に博奕ばくちが行われ、また和田と門人・柴崎が相当な使い手であることも分かった。
    その翌朝平蔵は、3日前から出勤した川村がお目通りを願い、犯人逮捕に是非加えてほしいと陳情するので、これを許し、その夜川村を従え、中里町の稲荷社の境内に到着した。報告によれば道場の人数は15人位で、博奕が行われている。一方改め方は平蔵以下24名で、やがて表と裏から道場に一斉に打ち込んだ。
    大乱闘の末、改め方がほとんどの者を逮捕した時、和田と柴崎が雨戸を開け、縁側に立ち長剣を抜いた。その時川村も大刀を引き抜いたので、平蔵は川村と前へ進み、「長谷川平蔵だ。これなるはおのれらに妻を殺害された川村弥助」といい放つ。2人が襲ってきたので、平蔵はその剣をかわし、柴崎の太股を切り、「川村」と叫び、和田が片手上段に振りかぶった瞬間、あの臆病な川村がなんの恐れもなく、物をいわず、大刀を突き出したまま、地を蹴って和田の胸もとに飛び込んで行った。絶叫をあげたのは和田の方であった。川村の大刀は深々と和田の腹を突き通したが、なおも川村は和田の体を押しまくり、折り重なって倒れた。
    その後平蔵の申立てにより、幕府は無役の3千石の旗本・秋元左近を評定所に呼び出し、後援していた和田道場の2人を使い、婦女を暴行、殺害し、博奕を行った罪で切腹を命じた。また柴崎は死罪となり、旗本の子弟も博奕で処罰された。
    一方川村は改め方で尊敬されるようになった。妻・久栄も川村を激賞するので、平蔵は口外無用と断り、「川村は敵の刃を受けて、女房の後を追い、あの世へ行きたい一心だったのだと思う。その一心で突き込んできたから、和田はびっくりしてやられたのだ」という。それを聞いた久栄が「それをお知りになって川村殿を敵に向かわせたのですか」と尋ねると、平蔵は「川村がそれを望んだからだ」という。久栄は、平蔵の言葉の底に余人には測り知れぬ男の想いが隠されていると思った。




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2023年11月30日