生産人口の減少続く日本、働き手の確保とD.E.I /新鬼平随想録[第20回]

*2024年2月8日(木)

このたびの令和6年能登半島地震により被災された皆様、ならびにご家族の皆様、関係者の皆さまに謹んでお見舞い申し上げます。

JTEXでは能登半島地震の影響により、現在、ご受講いただいてる講座を学ぶことが困難な状況にある受講生の皆さまが、安心して学習を継続いただける支援を検討してまいりました。

JTEXではこのたび、令和6年能登半島地震で被災された地域の受講生の皆さまに、無償にて教材の再発送や在籍期間延長などの支援策を実施することを決定いたしましたのでお知らせいたします。
ご希望の場合は、ただちに対応いたしますので、お申し出くださいますようお願いいたします。



暮冬の候、皆様いかがお過ごしでしょうか。

本日は、

  • 生産人口の減少続く日本、働き手の確保とD.E.Iについて
  • 石岡慎太郎(JTEX理事長)による池波正太郎の小説『鬼平犯科帳』をもとにした「新鬼平随想録」
    第20話

について、ご案内いたします。ぜひ最後までご拝読いただければ幸いです。

生産人口の減少続く日本、働き手の確保とD.E.I

政府統計では2024年1月1日の日本の総人口は1億2,409万人で、そのうち「15歳~65歳の生産人口」は、59.6%の7,397万2千人で、前年同月に比して0.4%の減少です。生産人口はこのまま減り続け、2065年には4,529万人になると推定されています。
総人口が減少する中で65歳以上が増加を続け、2036年に33.3%で3人に1人となり、いったん減少に転じるものの高齢化率は上昇を続け、2065年には、国民の約2.6人に1人が65歳以上の者となる社会の到来が推計されています。



人にかわるAI・ロボットの活用は見込まれるものの、それだけでは社会に必要な全ての業務をカバーすることはできません。
企業は、人口減少の現実をしっかりと見つめ、女性、男性にかかわらず、年齢の幅を一律に規定することなく、国籍・民族の壁をなくし、誰でもいきいきと活躍できる職場となるように、

  • iversity(多様性)
  • quity(公正性)
  • nclusion(包括性)

を推進することが求められていきます。
働き手確保の現状と、OECDの提言、日本政府の対策を見ていきます。

OECDが日本に対し高齢化への対処を提言

OECD(経済協力開発機構)は、1月11日に「日本は財政余力を回復し、高齢化に対処し、生産性の伸びを再活性化する必要がある。」とのレポートを発表し、急速に進む人口高齢化による経済的・社会的影響への対処に、今こそ焦点を当てるべきと提言しました。
日本ではパンデミックの時期に重なり、「働き方改革」などの労働市場改革が、女性や高齢者の労働参加率を高めたことにより、パンデミックからの回復が支えられたとの見方を示しています。
今後は、急速な人口構造の変化による公共予算の圧迫を避けるために、さらに女性と高齢者の労働参加率をさらに高め、有能な外国人労働者をより惹きつける取り組みが必要と提言しています。
その骨子は、以下の5点です。

  • 1.定年制廃止・年金受給開始年齢の引き上げ
  • 2.年功序列賃金からの脱却・同一労働同一賃金の徹底
  • 3.女性の雇用促進・就労控えを招く税制の見直し
  • 4.家族と子供に対する支援政策
  • 5.

定年制の廃止と同一労働同一賃金、高年齢労働者の活躍促進

 数年前から定年制を廃止する企業が増えていますが、2022年時点では、94%の日本企業が定年制を設け、その70%が60歳定年です。現在、日本は65歳までの雇用確保義務、70歳までの就業機会の提供が努力義務となっていますが、職探しをする65歳以上の高齢者が年々増加している現状があります。
先進国で定年制を設けているのは、日本と韓国だけであり、この制度を廃止し、年金受給年齢を引き上げることで、高齢者の労働参加を促進しようとOECDは提言しています。
定年制が必要となる要因は年功序列賃金にあることから、JOB型など、能力・役割に応じた報酬への転換が必要です。
性別や年齢に関係なく、同一労働同一賃金が徹底することで、モチベーションを向上させ、労働生産性も上げようという考え方です。
企業にとって、経験豊かな高年齢労働者の知見を生かすことができる一方、高年齢労働者特有の問題への配慮が必要となります。高齢者の労働意欲や心身の健康には大きな個人差があり、一人ひとりにあった働き方への対応と、身体の加齢に伴う衰えからくる不安全行動への配慮が不可欠となります。

柔軟な働き方と共育児、介護・看護の両立支援

 現在、雇用者世帯の75%が共働き世帯となりましたが、その半数以上は一方が非正規労働者です。女性労働者の5割が非正規労働者(男性は2割)である日本、女性の活力を高めるためには、正規登用への道を拓くとともに、就労控えを招く税制の見直しが待たれ、被用者保険の適用・拡大がOECDから提言されています。
2023年の調査では、育児休業取得率は女性が80.2%、男性が17.13%です。「こども未来戦略(2023/12/22)」では、共働き、共育ての推進として、男性の育児休業取得率を、2025年50%⇒2030年85%にする目標が盛り込まれました。
雇用保険を改正し、2025年から、両親の14日以上の育児休業取得を条件に、給付金支給率を休業手取りの10割にし、2歳未満の育児で時短勤務した場合、賃金の1割が支給されるようになります。
また、今後、柔軟な働き方を実現するための措置として、事業主に労働者が選択できる「始業時刻等の変更、短時間勤務制度、テレワーク等」の措置を講じる義務などが検討されています。
他方、家族の介護や看護による離職者は年間10万を超えるようになっています。離職の背景には、労働者が介護休業制度や介護休暇制度、その他の柔軟な働き方などの両立支援制度について、制度の内容やその利用方法に関する知識が十分でなかったケースがあり、周知に努める必要があります。
人には家庭生活があり、育児や介護・看護など全てを他人任せにはできません。仕事・労働は大切ですが、人としての営みを排除して、職場では会社人間として生きよという従来型の考え方は大きな変更を迫られています。

激化する外国人材争奪戦

 2023年10月時点の調査で外国人労働者が初めて200万人を突破しました。2016年に100万人を超え、7年で倍増し、日本の雇用者数の3%を占めるまでになりました。
高度人材などの「専門的・技術分野」の伸びが最も多いが、国を挙げて人材獲得に乗り出している韓国や台湾など海外企業との争奪戦が激化しており、外国人労働者にとって魅力ある雇用条件や制度を整え、「選ばれる企業」となる必要があります。
政府は、問題となった現行の技能実習制度を発展的に解消し、3年間の就労を通じた育成期間で特定技能1号の技能水準に育成することを目的とする長期就労につながる新たな制度の創設を目指しています。
新たな制度の受け入れ対象分野を特定技能制度における「特定産業分野」に限ることが想定されており、従来の14分野の「特定産業分野」に加えて、自動車運送業や鉄道、林業、木材産業の追加、既存分野の内容の追加も検討されています。
外国人は就労開始前までに日本語能力A1(日本語能力試験5等)相当以上の試験に合格するか、相当の講習を受講することが求められ、受け入れ機関は受け入れ後1年以内に「技能試験基礎級等」を受験させなければならないなどの要件が検討されています。
従来は原則禁止であった転職も検討されていますが、人口減が見込まれる国は多く、高度人材を問わず、外国人材を引き寄せ、長期にわたりつなぎ留めるために、従来の考え方を脱皮して、働き手の要望を採り入れながら企業の魅力を高める取り組みが欠かせません。

お役立ちできるJTEX講座

高齢労働者の健康マネジメントのために
    シルバー人材の健康マネジメント

     
     
     
     

女性の活力を企業に
    SDGs女性活躍推進からはじめる ダイバーシティの実践−GOAL5−

     
     
     
     

働き方を考える
    働き方・生き方改革講座―実践ワーク・ライフバランスー

     
     
     
     

外国人材とチームをつくる
    ONE TEAM!「外国人と共に働き成果を出す」講座

     
     
     
     

日本語能力検定・技能検定にチャレンジを支援する
    【e:TRY! 日本語JLPT】 N1~N5(JLPTオンラインハーフ模試付き)

     
     
     
     

    認定訓練コース(3級技能検定対策コース)

     
     
     
     

職場のD,E,Iを推進する
    マンガで学ぶ「心理的安全性」~働きやすい職場づくり

     
     
     
     

    自己肯定感を引き出す部下の育て方

     
     
     
     



鬼平犯科帳連載について

JTEXメールマガジンでは、石岡慎太郎(JTEX理事長)による池波正太郎の小説『鬼平犯科帳』をもとにした「新鬼平随想録」を1話ずつお届けします。息抜きにご一読いただければ幸いです。

作者の池波正太郎氏は19歳のとき(昭和17年)、小平の国民勤労訓練所(戦後の中央職業訓練所)に入り、萱場製作所で2年間、四尺旋盤を使って飛行機の精密部品を作り、そのとき体で覚えたものつくりの手順で、『鬼平犯科帳』を書いたといいます。
このように、この小説の背景は意外に深く、皆様もこの作品から学ばれる点が多いと思います。



第20回 おまさ狐火

    おまさが佐倉の叔母の葬儀に出た帰り、葛飾の新宿にいじゅくの渡し口で、早朝舟を待っていると、近くの茶店の娘が戸を開け始めた。その清楚な顔が昔、上方の大盗賊・狐火きつねびの勇五郎の江戸の妾であったお静さんとよく似ている。乗船後も茶店を見ていると、10年前に狐火一味の引き込み女をしていた時、勇五郎の右腕といわれた瀬戸川の源七さんが外へ現われた。これでおまさもあの茶店が狐火一味の盗人宿ぬすっとやどであり、勇五郎の息子で二代目を継いだ又太郎さんがいよいよ江戸へ乗り込んでくるのか、と思うに至った。

    盗人宿の発見は密偵がすぐ長官に報告すべき重要事項である。しかし報告すれば、二代目を長谷川様が見逃す筈はない。いかに二代目が先代の教え通り、人を殺さない等の3ヵ条を守る本格の盗賊であってもである。

    またおまさは10年前、又太郎と夫婦めおととなる寸前までいった仲であった。結局仲間内の色恋を禁じた先代に追い出されたが、そんな人を密告する気持にどうしてもなれない。

    翌朝おまさは報告をしないと決心して改め方へ行くが、それどころでなかった。昨夜市ヶ谷の薬種屋・山田屋へ盗賊が入り、一家17人を皆殺しにする事件が発生、役宅は騒然としている。

    すぐ平蔵がいる居間の縁先へ廻ると、盗賊は二代目の狐火の勇五郎だといわれたが、おまさは信じられない。しかし盗賊が山田屋の柱に貼った、闇夜に浮ぶ狐火の色刷りの札を見せられると、それは正しく本物であった。

    半信半疑で山田屋へいくと、現場は凄惨を極めていた。おまさは一目見て顔をそむけ、違う、これは違います、二代目の仕業でありません、と夢中になって平蔵にささやいてしまう。

    このためおまさは平蔵に近くの料理茶屋へ連れていかれた。そして、何故二代目をかばうのだ、二代目と恋仲だったのか、先代には2人の息子がいた、お前のいう二代目はどちらなのだ、誰が二代目でもあんな事件を起した奴はお前も許せない筈だ、是非力を貸してくれと頼まれた。又太郎の仕業でないと確信したおまさは、悪党どもへの闘志が湧き上がり、はいと返事をしたのであった。

    それから4日間、おまさは新宿の茶店を見張り続けたが、何の異常もない。昔なじみの密偵・彦十さんの知恵を借りたくなり、その夜すべてを打ち明けたところ、長谷川様には秘密にして協力をしよう、おまさは思い切って茶店を訪ねてみた方がいい、といってくれた。

    翌日の夕暮、おまさは町人の女房風の旅姿になって茶店へ入り、10年振りに源七と再会した。おまさは乙畑おとばたの源八お頭が捕まったので上総へ行くところだといって、二代目が江戸へ出てこられるのかとさりげなく尋ねると、源七は、4年前に先代の遺言で足を洗った、お静さんの娘・お久ちゃんを育てている、今晩は泊めるが、朝にはすぐ発ってほしいという。

    翌朝おまさが茶店を出ようとした時、舟から降りた一人の男がおまささんといって近付いてきた。何と10年振りに会う又太郎であった。きちんとした旅姿で、32歳であるが、身のこなしは若々しく、容貌は堂々としている。源七の意見を聞きたくて京から来たというので、おまさが失礼しようとすると、おまさも一緒に話を聞いてくれないかといわれた。

    奥の一間に入った又太郎は、今春、京大坂で二代目の偽者が大店2軒を襲い、皆殺しにした、江戸でも5日前にその偽者が山田屋へ押し込み、皆殺しにした、偽者は弟の文吉だ、先代は自分を二代目にされた、本妻の子・文吉は不服で6人程連れて一味を出ていったのだと打ち明けた。

    その頃対岸の亀有の番小屋では、平蔵と密偵の彦十、粂八くめはちが茶店を見張っている。その間、彦十が、俺はおまさを裏切ってしまった、今度はどんな結末になろうとも、おまさの顔を立ててくれないと、俺が収まりませんぜとしきりに恐迫するので、平蔵もわかった、わかったよといっている。

    その夜二代目達は店の土間の腰掛けでひたいを集め、偽者の盗人宿の場所について意見を出し合い、先代とお静さんが住んでいた大川(隅田川)の左岸の木母寺もくぼじ(墨田区堤通)近くの空き家がそれだという結論になった。そして源七がそこで文吉を見付けたらどうするか聞いたところ、京へ連れ帰り、真のおつとめを叩き込むが、いやだといえば殺すと答えた。

    翌朝彦十達が近くの葦の中の苫舟とまぶねから見張っているとも知らず、源七は中川を渡り、山田屋事件の聞き込みに行った。この結果偽者一味には浪人者が相当数いるので注意をして、次の事件が起きないよう、明日盗人宿に乗り込もうという話になった。
    疲れた源七は間もなく休んだので、おまさは中2階の部屋へ上って二代目の床を延べ始めると、二代目が上に上がってくる気配を感じたが、逃げなかった。会いたかったという二代目に背後から抱き締められたおまさは、いけません、おかみさんに悪い、といって抵抗するが、いるもんか、なってくれるか、女房に、といわれると、どうにでもなれと思い、双腕に力を込め、彼の背中を抱き締めてしまった。
    翌日の昼下り、3人を乗せた苫舟が綾瀬川から大川に入り、木母寺の下流の左岸の葦の中に隠れた。中川の新宿からずっと付けてきた、平蔵、彦十、粂八の苫舟は、木母寺の上流の左岸の葦の中に潜んだ。

    やがて夜の闇が大川を被うと、盗人宿の潜戸くぐりどが開き、提灯を持った男が出てきて、堤の下の道を南へ行く。二代目の苫舟もすぐ大川を南下し、諏訪明神前の舟着場に先着した。
    二代目が先代の配下・岡津の与平を襲い、舟に連れ込み、一連の皆殺し事件が文吉の仕業であること、盗人宿の内部状況等を白状させた後、苫舟は元の場所へ戻った。もう一隻の苫舟も巧みに後を付けつつ元の場所へ戻り、粂八が岸に上がって二代目の苫舟を見張る。

    二代目は一緒にいくというおまさを舟に残し、死も覚悟して一人岸に上がり、盗人宿へ乗り込む。粂八からこの動きを報告された平蔵も、彦十を残し、粂八と盗人宿へ急ぐ。

    二代目は文吉とお千の寝ている部屋へ入ると、すぐお千の首を締めた。お千は先代におまさとの仲を密告し、文吉をそそのかして分派させ、そして引き込み女として、文吉の畜生ばたらきを先導してきたからであった。
    気がついた文吉に畜生ばたらきをやめて、京へ帰ることを繰り返し、繰り返し説得したが、文吉は、生きて帰さないぞといい、襖を倒し次の間へ転げ込み、雨戸を蹴って裏庭ヘ踊り出た。二代目も続いたが、物音を聞いた浪人4人が庭へ飛び降りてきた。

    その時浪人の前にぬっと立ちはだかったのが、長谷川平蔵。忽ち2人を倒し、逃げた3人目を隠れていた粂八が根棒て倒すと、2人の賊を追えと命じ、4人目を居合いで倒した。
    粂八が呼ぶので、駆け付けると、二代目がうなだれて座っている。その傍に短刀が深々と胸に立った文吉が倒れていて、二代目が平蔵に、文吉が偽の二代目で、畜生ばたらきをやめないので、殺したといった時である。
    潜戸の辺りからおまさが二代目を呼びながら、源七と駆け込んできた。それを見て平蔵は、おまさを連れて京へ戻れ、堅気になって共に暮せ、と命じた。10両を盗むと死罪の時代。まさかと驚く二代目に、その代り盗みをしないという証文を置いていけといって、平蔵の国綱が又も閃き、左腕の肘の下から切断された二代目は草の中に顔を埋めた。

     そして、おまさ、介抱してやれ、2度と顔を見せるなという平蔵におまさは短くお礼を述べ、何かを伝えた。役宅へ急ぎ戻った平蔵は、盗人宿へ同心達を急行させ、3日後の犯行のため次々と現われる盗賊どもを7人全員逮捕し、ここに兇悪な一味も全滅となった。
    翌年の4月末おまさが旅姿で役宅へ現われ、平蔵の居間の庭先に廻った。
    「顔を見せぬ約束だぞ」
    「京の仏具屋・今津屋又太郎は1月前に、はやり病いで亡くなりました。でもこの1年が10年にも思えます」
    「うれしかったか、それ程に」
    「はい」
    「お前も男運がないのう」
    「また密偵いぬになりとうございます」
    「裏切った彦十を許してくれるか」
    「あれから彦十さんに手を合せておりました」
    「好きにいたせ。俺も心強い」(第40話「狐火」文春文庫6巻)




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2024年2月8日